Koichi Murakami Solo Exhibition村上紘一 展
=風の景=
Koichi Murakami Solo Exhibition
村上紘一 展
=風の景=
2020.4.3Fri.~4.12Sun.
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風が吹いている。 ゆるやかな風、 涼やかな風、 激しい風。
時に光を屈折させ、 風景を変容させる。
風のあいだに見える、 ひとところに留まることのない色やかたちを、 キャンバスに残していきたい。
村上 紘一
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村上 紘一 (むらかみ こういち)
1976年 熊本県生まれ 岩手県在住
2000年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業 2000年より個展、グループ展などで活動している
■ 主な受賞、入選/2007年青木繁記念大賞展優秀賞、2011年シェル美術賞入選、2013、14、15年FACE美術賞入選他
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村上さんが今回の個展に寄せてくださった文章をご紹介します。
「描くことと眺めること」
私にとって絵を描くことは、割合と受け身な行為です。
描きはじめはいつも、完成形が見えていません。
できれば絵の方で勝手に進んでいってもらえると助かるんだけどなあ、
といささか無責任な態度で制作しています。
もちろん、意図を持って色や形を組み合わせていくことも欠かせませんが、
画面上での絵具の重なりや滲み、それによって起こる響き合いを大切に、
絵具の美しさが生きるように、仕事を重ねています。
岩手に暮らして3年になります。
岩手、盛岡の風光は美しく、そして厳しい。
初夏の大きく開けた空、浮かぶ雲。水面の煌めきは見飽きるということがありません。
長い冬の間には大きな池も凍り付き、モノトーンの風景が静かに横たわります。
ゆっくりと降り積もる雪が、時の流れを感じさせてくれます。
ダイナミックな広がりと変化のある風景は、私にとって格好のモチーフとなりました。
今回の個展の殆どの題材が、自宅から半径1kmほどの川べりや、林の風景です。
足を延ばせば、さらに様々なモチーフに出会えるのでしょうが、季節毎、時刻毎に
変化を続ける近辺の風景は、十分なインスピレーションを与えてくれます。
風も、空も、水も、遥かな場所までつながっている。
「風のあいだ」シリーズは風によって変容する風景を、「そらをうつす」「そらのかけら」
シリーズは、小さな水たまりに映る光や空の広がりを描きました。
林を吹き抜ける風、爽やかな緑と水面の煌めき、紅葉した落ち葉、残雪など、
季節によってさまざまな表情の変化を拾うことができ、それが水彩や油彩という
流動性のある画材とリンクしてくるようです。
3年前に始めた銅版画では、ニードルによる点描、線描という小さな単位で風景を再構築する
ことで、画面空間をまた違った単位で捉える面白さを感じています。
身の回りの風景が、画面の上で絵具や水と出会い(油彩作品はホルベインの可水溶性油絵具、DUO
を使用、水を希釈材として描画しています)、あるいはプレス機を通して、新たな風景に変化して
いく様を眺め、楽しみながら筆を動かしています。
モチーフとの対話、画面との対話。
この作品群を見て下さった方々と、新たな対話が生まれることを願って。
2020.4.3 村上紘一
(補足)
・油彩では堅牢性と水彩のような軽やかさを両立するため、ホルベインDUOを使って、水で溶きながら描いています。
滲みや弾きなど、偶然性も多いに活用し、大作では画面に絵具の表情を作ってから、風景をコラージュする感覚で描いています。
小品に関しては、風景をほぼそのまま切り取って描いている物もあります。
・水彩は、ガッシュです。描いては水で洗いながら、いい表情が出るようにしています。油彩に対して、筆触など、
より生の感じが出せればと考えています。
・版画に関しては、油彩小品と同じ題材を、より限られた技法で取り組むことで、表現方法を問い直す意味も含め、
より小さな画面の中での広がりを楽しんでいます。